「パイロットになりたいけど、航空身体検査って何を調べるの?」
「健康診断とは何が違う?」
「少しでも数値が悪かったら、パイロットにはなれない?」
パイロットを目指し始めると、かなり早い段階で出てくるのが航空身体検査です。
私自身もパイロットを目指して訓練する中で、これまで航空身体検査を受けてきました。
初めて受ける前は、
「いったい何をどこまで調べられるんだ……?」
と結構不安でした(笑)。
一般的な健康診断と似ている検査もありますが、パイロットとして安全に航空業務を行える身体状態かを確認するため、視力や聴力だけでなく、循環器、呼吸器、血液、尿、精神・神経系など、さまざまな基準が設けられています。
この記事では、国土交通省が定めている航空身体検査の基準をもとに、
・そもそも航空身体検査とは何か
・第1種と第2種は何が違うのか
・実際にどんな検査をするのか
・視力や聴力では何を確認されるのか
・血液検査や尿検査では何を見るのか
・心電図や脳波検査はあるのか
・基準から外れたら、その時点でパイロットになれないのか
・私が実際に受けて感じたこと
まで、できるだけ分かりやすくまとめます。
「航空身体検査が怖くて、パイロットを目指すのを迷っている」
という方にこそ読んでもらいたい内容です。
航空身体検査とは?
航空身体検査は、簡単に言えば、
「航空機の運航を安全に行える身体状態か」
を確認するための検査です。
普通の健康診断で「健康です」と言われたからといって、それだけで航空身体検査にも適合するとは限りません。
航空機乗組員は、技能証明だけでなく航空身体検査証明を受けていなければ、原則として航空業務を行うことができません。
そして航空身体検査は、どこの病院でも受けられるわけではなく、国土交通大臣から指定された航空身体検査指定機関で受けることになります。
つまり、パイロットにとって航空身体検査は、
「採用試験のときだけ受ければ終わり」
ではありません。
パイロットとして飛び続けるために、継続して向き合うことになる検査です。
第1種と第2種航空身体検査の違い
航空身体検査には、大きく第1種と第2種があります。
パイロットを目指している方なら、この違いは最初に知っておいた方がいいです。
国土交通省の制度上、第1種航空身体検査は、定期運送用操縦士、事業用操縦士、準定期運送用操縦士などに対応しています。
一方、自家用操縦士などでは第2種が関係します。
エアラインパイロットを目指してこの記事を読んでいる方は、基本的には第1種航空身体検査を意識しておけばいいでしょう。
大学のパイロット養成課程などでも、出願や訓練開始にあたって第1種、または第1種相当の身体検査への適合が求められるケースがあります。
ただし、学校や航空会社独自の条件が設定されることもあるため、
「第1種に適合=すべての学校・航空会社を受験できる」
と考えるのは少し危険です。
志望先の募集要項も必ず確認してください。
航空身体検査では何を検査する?
| 主な分野 | 確認される内容の例 |
|---|---|
| 眼 | 視力・色覚・視野・眼位など |
| 耳・鼻・のど | 聴力など |
| 循環器 | 血圧・心臓・心電図など |
| 呼吸器 | 呼吸器系の状態 |
| 血液 | 血液検査による各種数値 |
| 尿 | 尿検査 |
| 消化器 | 消化器系の状態 |
| 精神・神経 | 神経系の状態など |
| その他 | 問診・既往歴など |
「こんなにあるの?」
と思いますよね。
私も最初はそう思いました。
ただ、すべての項目で何か特殊な検査を延々と行うわけではありません。
一般的な健康診断で経験したことのある検査もあります。
一方で、視力・視野・色覚・聴力など、パイロットだからこそ特に気になる項目もあります。
ここから、私自身が受けた経験も交えながら項目ごとに紹介します。
視力・目の検査
パイロットの身体検査と聞いて、まず視力を心配する方は多いと思います。
ただし、
「裸眼視力が悪い=パイロットになれない」
ではありません。
第1種航空身体検査では、裸眼だけでなく、メガネなどを使用した矯正視力についても基準があります。
また、単純な視力だけでなく、目に関する基準はほかにもあります。
私自身も航空身体検査に関連して、視力だけでなく、視野や両眼視について確認を受けた経験があります。
視野検査では、視野のさまざまな位置に光が出て、見えたときにボタンを押していく検査などがあります。
私の場合、眼科で視野検査を受けた際には問題ないと言われました。
また両眼視について詳しく確認した際には、立体視を確認する検査も経験しています。
視力の具体的な基準や、メガネ・コンタクト、レンズの度数については、別の記事で詳しくまとめています。
→ 「目が悪くてもパイロットになれる?視力・メガネ・コンタクトの基準」
聴力検査
パイロットにとって、音を正しく聞き取る能力も重要です。
飛行中は、管制官との無線交信や機内でのコミュニケーションなど、耳から得る情報が非常に多いからです。
航空身体検査では聴力についても基準が設けられています。
実際の検査では、ヘッドホンなどを装着し、左右それぞれの耳で音が聞こえるかを確認する検査を受けます。
普段の生活で問題なく会話できているからといって、航空身体検査の基準まで自己判断することはできません。
聴力に不安がある場合は、航空身体検査の指定機関などで事前に相談するのが確実です。
血液検査
航空身体検査では、血液検査も気になる項目の一つです。
私自身、これまでの検査で血液検査の数値をかなり気にしてきました。
「痩せているし、お酒もそんなに飲まないから大丈夫」
と思っていても、血液検査の数値は体型だけで決まるわけではありません。
例えば、私が以前かなり気にして調べたものの一つが尿酸値です。
尿酸値というと、
「お酒をたくさん飲む人」
「太っている人」
「食べすぎている人」
というイメージを持つ方もいると思います。
しかし実際には、体質や尿酸の排泄、脱水、食事、飲酒、運動など、さまざまな要因が関係します。
だからこそ、
「若いから大丈夫」「運動してるから大丈夫」
と決めつけず、普段の健康診断などでも自分の数値を把握しておくことが大切だと思います。
尿検査
尿検査も航空身体検査で行われる検査の一つです。
私は以前、検査前に水分を多く取ることをかなり意識していた時期もありました。
ただ、これは現在振り返ると、
「水をたくさん飲めば悪い数値をごまかせる」
という意味で紹介するべきではないと思っています。
航空身体検査は試験の点数を一時的に良く見せるためのものではなく、パイロットとして安全に飛び続けられる身体状態かを確認するためのものだからです。
検査前だけ無理なことをするより、自分の普段の状態を把握しておくことの方がずっと重要です。
また、検査機関から飲食や水分摂取について指示がある場合には、その指示に従ってください。
心電図・循環器系
パイロットの仕事では、心臓や循環器系の状態も重要です。
航空身体検査では、血圧や心電図などを通して循環器系の状態を確認します。
心電図自体は健康診断などでも経験したことがある方が多いと思います。
ベッドに横になり、電極を付けて心臓の電気的な活動を記録する検査です。
「緊張して心拍数が上がったら終わり?」
と不安になる方もいるかもしれませんが、単純に心拍数一つだけで判断するものではありません。
何か持病や過去の異常を指摘されたことがある場合には、自己判断せず指定医に相談することが大切です。
脳波検査はある?
「パイロットの身体検査って、脳波まで調べるの?」
ここは初めて航空身体検査を受ける方が気になるところだと思います。
航空身体検査マニュアルでは、脳波検査は初回の航空身体検査時のほか、航空事故やその他の事故などで頭部に衝撃を受けた後の最初の航空身体検査時、その他診断上必要と認められた場合に実施するとされています。国土交通省
つまり、毎回必ず脳波検査をするというものではありません。
初めて受ける人と、更新で受ける人とでは、検査内容が完全に同じとは限らないということです。
航空身体検査で引っかかったらパイロットになれない?
一番怖いのはここですよね。
「一つでも基準から外れたら、その瞬間にパイロットへの道は終了なの?」
結論から言うと、必ずしもそこまで単純ではありません。
国土交通省の制度には、身体検査基準に適合しない場合でも、その人の経験や能力などを考慮し、航空機の運航に支障を生じないと国土交通大臣が認めた場合には、適合とみなされる仕組みがあります。国土交通省
また、検査項目によっては追加検査や詳しい診察が必要になることもあります。
ですから、ネットで基準を見て、
「自分、この数値を超えてる。もう無理だ……」
と自己判断するのはおすすめしません。
気になる既往歴や検査値がある場合には、航空身体検査指定機関や指定医に相談することが一番確実です。
私が実際に受けて感じたこと
私自身、パイロットを目指してから、普通に生活していた頃より圧倒的に自分の身体の数値を気にするようになりました。
視力、血液検査、尿検査、心電図……。
一つ一つの数字を見るたびに、
「これ大丈夫かな?」
と不安になることもありました。
実際、目について詳しい検査を受けたこともありますし、血液検査の数値について自分でかなり調べたこともあります。
ただ、何度か航空身体検査を経験して思うのは、
「検査直前だけ完璧な身体を作ろうとする」より、「普段から自分の状態を知っておく」方が大切
ということです。
パイロットは航空身体検査に一度合格したら終わりではありません。
飛び続ける限り、身体の状態と付き合っていくことになります。
だから私は、航空身体検査を単なる「合否試験」と考えるより、
パイロットとして長く飛び続けるための健康チェック
と考えた方がいいと思っています。
初めて航空身体検査を受ける人へ
初めて受ける方に一番伝えたいのは、
分からないことをネットの情報だけで自己判断しないことです。
私の記事も含め、ネット上の記事はあくまで参考情報です。
航空身体検査の基準は細かく、既往歴や現在の状態によって必要な確認も変わります。
特に、
・過去に大きな病気や手術をした
・現在薬を服用している
・視力や色覚に不安がある
・聴力に不安がある
・心電図などで異常を指摘されたことがある
・健康診断の血液検査で継続して異常値がある
といった場合には、訓練や受験に多額のお金を使う前に、航空身体検査指定機関などへ相談しておく方が安心です。
パイロット訓練は時間もお金もかかります。
何年も準備してから身体面の問題が分かるより、早い段階で確認しておく方が圧倒的にいいと思います。
まとめ|航空身体検査を必要以上に怖がらなくていい
航空身体検査には、視力、聴力、血液、尿、循環器、精神・神経系など、さまざまな基準があります。
初めて基準を見ると、
「こんなに全部チェックされるの?」
と不安になるかもしれません。
私もそうでした。
でも、ネットで一つの数字だけを見て、
「自分はパイロットになれない」
と決める必要はありません。
大切なのは、
自分の身体の状態を知ること。
正しい基準を確認すること。
分からないことは指定医に相談すること。
この3つだと思います。
特にこれからパイロット養成大学や航空大学校、自社養成などを目指す方は、受験勉強だけでなく身体面についても早めに確認しておくことをおすすめします。
また、パイロットの視力については、
「目が悪くてもパイロットになれる?メガネ・コンタクトの基準も解説」
で詳しく紹介しています。
「裸眼視力が悪いから無理かも……」
と心配している方は、そちらも読んでみてください。
身体検査が不安だからという理由だけで、パイロットへの挑戦を始める前に諦めるのは、もったいないです。
まずは、自分の身体について正しく知るところから始めてみてください。



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